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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)113号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人小田泰三の上告趣意書第四點は「刑事訴訟法第七十二條ニハ「官吏又ハ公吏書類ヲ作ルニハ文字ヲ改竄スベカラズ挿入削除又ハ欄外記入ヲ爲シタルトキハ之ニ認印シ其ノ字數ヲ記入スベシ但シ削除シタル部分ハ之ヲ讀得ベキ爲字體ヲ存スベシ」ト規定シテイル。

然ルニ原審第二回公判調書中記録第三七二丁裏第七行同丁裏第十行及ビ同記録第三七三丁表第一行中ノ各「七首」トアリタル二字ヲ削除シテ「花切出」ノ三字ヲ夫々挿入シテ認印シアルニ拘ラズソノ上欄ニハ夫々單ニ「二字訂正」トアルノミデアル。コレハ「三字挿入二字削除」トスベキデアル。之ヲ爲サナカッタ原審第二回公判調書ハ明ニ刑事訴訟法第七十二條ノ規定ニ違反スルモノデアルカラ此ノ調書中ノ証人金山忠一ノ証言ヲ証據ニ引用シタ原判決ハ違法ノ証據ヲ採用シタコトニナリ破毀ヲ免レナイ。」というのである。

原審第二回公判調書中に、所論のような文字の挿入、削除があるにかゝわらず、欄外に單に「二字訂正」とのみ記載せられていることは、所論のとおりである。しかしながら、これがために、同公判調書全體の無効を來すものでないことは勿論であり、かつ、同調書中、原判決が証據として引用した証人金山忠一の供述に関する部分には、右のような文字の挿入削除はすこしもないことは記録上あきらかであるから、結局、所論の點は原判決には何ら影響を及ぼさないものというべきである。論旨もまた理由がない。(その他の上告論旨及び判決理由は省略する。)

以上の理由により刑事訴訟法第四百四十六條を適用し、主文の如く判決する。

右は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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